掲載日:2016年12月
作者迪伦·丹尼尔,博士,科学发展主任
詳細については,前臨床オンコロジー科学チームまでお問い合わせください。
乳癌は米国の女性において,肺癌に次いで2番目に死亡者数が多い悪性腫瘍で,2016年は新たに246000件の症例が発生し,死者は40450名に達する見込みです。乳癌は治療の選択肢が多く,外科手術,放射線療法,抗エストロゲン療法,標的療法(トラスツズマブなど),化学療法などがあります。しかし,治療法が進歩しているにもかかわらず,この転移性疾患はなおも主な死因です。この5年ほどは免疫療法が目覚ましい発展を遂げ,4つのT細胞免疫チェックポイント阻害剤が承認されました。これらのチェックポイント阻害剤はいずれも乳癌向けには承認されていませんが,現在は乳癌でもPD-1やPD-L1を標的としたチェックポイント阻害剤を扱う治験が60件以上,CTLA-4阻害剤を扱う治験が20件以上進行しています。
チェックポイント阻害剤やその他のクラスの免疫療法では,欠陥のない免疫系を使用して活性を誘発しなければならないため,新薬の前臨床試験では乳癌同系マウスモデルが重要なオプションとなります。そこでコーヴァンスでは,Immuno-Oncologyの新薬研究をサポートすべく,Balb / cマウスに由来する4 t1-luc2乳癌モデルを同所モデルとして完全に特性化しました。4 t1-luc2同所モデルの腫瘍は,リンパ節と肺に転移することが特長で,原発腫瘍と転移腫瘍の両方に対する治療効果を生物発光イメージングで調べられる点で価値の高いモデルです。4 t1-luc2の腫瘍の増殖状況はBalb / cマウスの免疫不全株や正常免疫株と変わらず,4 t1-luc2が弱い免疫原性を持つ腫瘍であることが伺えます(図1)。

図1:複数株のマウス(同系Balb / cマウスを含む)における4 t1-luc2の同所性増殖
PD-1やPD-L1に対して働く抗体の有効性試験では,4 t1担癌マウスの致死的な過敏性反応が壁となっています1。毒性の発現なしに2回の投与は可能でも,投与し続けることができません。その代わりとして,抗CTLA-4抗体を放射線の局所照射と併用した場合の有効性を評価しました。ハムスターの抗CTLA-4抗体を使用したところ,意外なことにそのアイソタイプコントロールの一部で有意な活性が見られました(図2 a)。抗体CTLA-4の活性と区別がつかないほど類似しています(図2 b)。放射線の局所照射は治療上は有益でしたが(図 2C)、放射線と抗 CTLA-4 の併用について明確な改善は見られませんでした(図 2D)。

図2:同所性4 t1-luc2乳癌モデルにおける抗CTLA-4と放射線局所照射の効果
転移組織量を生物発光イメージングにより評価しました。3図は,未処置マウス体内での転移の進行を示す画像です。抗CTLA-4で処置したマウスは,アイソタイプコントロールのマウスよりも転移組織量が減少していました(図3 b)。また,放射線局所照射によって転移組織量の有意な減少が発生しましたが,併用グループにおける効果は,抗CTLA-4単剤の活性によるものと同じでした。

図3:生物発光イメージングによる経時的転移全身組織量の評価

図3 b:転移組織量と治療反応の定量化
この試験の放射線処置では,全身へ照射する線量を下げるため鉛製のシールドを使用して局所照射を行いました。しかし,それでも一部のマウスは照射による毒性を示しました。コーヴァンスは現在,Xstrahl社の小動物放射線研究プラットフォーム(SARRP:小动物辐射平台)を使用して,全身の放射線毒性を低減できる焦点放射線技術を提供しています。

図4:アイソタイプ抗CTLA-4抗体を持つマウスに対する抗CTLA-4抗体療法の効果
4 t1-luc2モデルでハムスター抗体を使用したところ,特異的な抗腫瘍活性化が生じたため,続けてマウス抗CTLA-4抗体を使用して試験を実施しました。マウス抗CTLA-4による治療の結果は,4 t1-luc2モデルでは最小限の活性となりました(図4)。しかし,顧客がスポンサーとなるImmuno-Oncology新薬の試験では併用候補にもなり得ます。また当社では,フローサイトメトリーによる4 t1-luc2腫瘍の免疫プロファイリングを幅広く行っており,CD4 T細胞,CD8 T細胞,制御性T細胞,顆粒球MDSC,単球MDSC, M1 / M2腫瘍関連マクロファージ(TAM)など定量化も対象に含まれます(図5)。モデルは申し分なく特性化されており,顧客がスポンサーの新しい免疫療法や新薬の試験に使用できます。商用化されている免疫療法との併用も可能です。さらに詳しい情報や,コーヴァンスによる研究サポートについては,当社までお問い合わせください。

図5:フローサイトメトリーによる4 t1-luc2腫瘍の免疫プロファイリング
1商场他,OncoImmunology(2016年),5卷(2):e1075114
注:各試験は,AAALAC認定の施設で所定の動物倫理に従って実施されています。
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